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引き返す

羅臼でもようやく桜が咲き、暖かな季節を迎えました。
そう思っていても最高気温が一桁止まりの日があれば、冷たい北風が吹き続ける日があり、
本当に春なのか分からなくなる日もあります。

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それでも春は春。
雪が融けた石浜では定置網漁業用の網が準備されていました。

夏季は長靴で越えられる川も勢いが増し、
渡渉には胴付きが必要になるほど流量が増えていました。
※写真の川はカモイウンベ川です。

そこかしこで春を感じることができる知床の海岸線。
どうやら春を感じているのは私たちだけではないようです。
春晴れの海岸線の先に何やら黒く動くものがおりました。

知床と聞けばまず最初に名前が出てくるであろうこの生き物、ヒグマです。
海岸線をゆっくりと移動しながら餌を探していました。

例えばこんなものを食べていたようです。
こちらはセリ科のマルバトウキです。
セリ科といえばニンジンやミツバ、パセリなど身近に食べている野菜を含むグループ。
ヒグマが食べているくらいですから私たちが食べても美味しいかもしれません。

距離を置いて状況を確認しているとヒグマは海に入り、
まるで黄昏ているかのような雰囲気を出していました。
こんな姿を見ているとじっくりと眺めていたくなるかもしれません。
しかし、これは私たちと同じ土俵で起きていることなのです。

ヒグマはその時の状態一つ、私たちの行動一つでがらりと動きを変えます。
急斜面でも一瞬で 軽々と登っていく力を持っている彼らは、
当然私たちを屠る だけの力を持ち合わせています。
そんな生き物に対面したとき、あなたはどうしますか。

例え遠くに小さく見えるだけであったとしても、ヒグマが距離を詰めてくるような行動を取れば、
海岸線などでは私たちに逃げ場はありません。
これから良いシーズンを迎え、この海岸を幾人もの人が歩くことだろうと思いますが、
まず1度彼らの存在について、また対面する可能性がある自分について思いを巡らせていただきたいです。

決して慢心することがありませんように、目的達成を揺るがない第一の選択肢とするのではなく、
引き返すという選択肢を常にもっていていただきたいです。

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・知床岬方面へのレジャー目的の利用自粛要請・

4月12日、知床岬へ向かう海岸線(赤岩周辺)において、
シーカヤッカーがヒグマに追い回される事例が報告されました。
このヒグマについては今後継続して調査を行う予定ですが、
人間へのストーキング行為が懸念されるため、
当面の知床岬方面へのレジャー目的の利用自粛を強く要請しております。

※今回は環境省巡視として先端部に入っております。

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・浜の花咲く・

海が冷たく、時より寒風が吹く浜にも、
花を咲かせている植物が幾つも見られるようになってきました。
厚く一方向に伸びるように葉を茂らせているイワベンケイが黄色く透き通った花を咲かせておりました。




羅臼自然保護官事務所 宮奈

 記事掲載日: 2020/07/02  カテゴリ: NEWS
   

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